ソースイン/アウトポイントを同期移動させながらタイムライン位置を保持し、表示されるクリップ内容のみを変更する編集技法。
技術的詳細
実行時、ソースインとソースアウトは同期して移動されます。例えば24fpsで24フレームずつ移動させると、両方の基準点は正確に1秒右に移動します。クリップのタイムライン上の位置は、全く同じタイムコードアドレスに保たれます。Avid Media Composerのような最新の編集システムはリアルタイムでスリップ編集を実行しますが、初期のFinal Cut Proのような古いシステムでは2〜8秒のレンダリング時間が必要でした。このプロセスには、ソース素材の元のインポイントの前とアウトポイントの後に十分なハンドル素材が必要です。
歴史と発展
このコンセプトは、初のフルデジタル編集システムであるAvid/1の導入とともに1989年に生まれました。開発者のチャーリー・スタインバーグとビル・ワーナーは、4つのトリム機能(リップル、ロール、スライドとともに)の1つとしてスリップ編集を実装しました。SteenbeckやMoviolaのカッターは同様のテクニックを知っていましたが、物理的にカットして貼り付ける必要がありました。1994年にLightworksはマルチカメラ・スリップ編集の機能を追加し、2001年にはFinal Cut Proが初めてコンシューマー向けソフトウェアにスリップ機能を統合しました。
映画での実践的応用
クリストファー・ノーランは「ダンケルク」(2017年)で、3つの時間軸を正確に同期させるためにスリップ編集を多用しました。エディターのリー・スミスは400以上のクリップを平均12〜36フレーム移動させました。ダイアログシーンでは、スリップ編集によりタイムラインを変更せずにリップシンクを調整できます。アクションシーケンスは、正確なタイミング調整の恩恵を受けます。爆発シーンのクリップを6〜8フレーム移動させることで、音楽のビートに正確に同期させることができます。このワークフローは、従来のカット&インサート方式に比べて60〜80%の時間を節約します。
比較と代替手段
隣接するカットポイントを移動させるロール編集や、クリップ自体を移動させるスライド編集とは異なり、スリップ編集は表示されるコンテンツのみを変更します。一方、リップル編集は後続のタイムライン全体を移動させます。Adobe Premiere ProではCC 2019以降、「高度なスリップ」機能によりオーディオオフセットのフレーム単位の制御が可能になり、DaVinci Resolve 18は、移動されたフレーム間の自動カラーマッチングとスリップ編集を組み合わせています。簡単なタイミング調整には、従来のクラシック・スリップ編集が最も効率的なソリューションであり続けます。